TRAIL＜渡良瀬＞

『ねえ、今のモズさんの言葉聞いた？......』

　　『うん、聞いた、聞いた！！.....』

『モズさん、確か、”その長靴、雨用かい？晴れ用かい？”とか言っていたよ　　　ね......』

　　『ねえ、ねえ....　長靴に雨用と晴れ用って、あったっけ？.....』

『何言ってるのよ！！...

　　　　ふつう、長靴って、雨の日に履くに決まってるでしょうに！！？.....』

『そうよねえ.....』

　　『いったい、どういうこと！！？......』

『世の中には、不思議なこともあるもんよねえ......』

『何を言ってるんだい、あの二人は！！.....』

『あの二人、おっさんのことを何もわかっていないね......』

『おっさんの長靴には、二種類あって、一つは穴の開いた長靴、二つ目は穴の　開いていない普通の長靴......』

『そして、穴の開いた長靴の方を、”晴れの日用の長靴”、穴の開いていない普　通の長靴の方を、”雨の日用の長靴”というのだよ.....』

『そんなこと、渡良瀬の鳥さんなら、み〜んな知ってることだけどね.....』

『おっさんは、年がら年中長靴ばっかり履いているでしょ.....

　　だから、あっという間にゴムが擦り切れて穴が開いてしまうのさ.....』

『まったく、おっさんたら、一年で、いったい何足長靴を買い替えているや　　ら.....』

『バッカみたい！！.......』

『でも、流石のおっさんも、このまま長靴を買い続けると、家計が破産してし　まうとやっと気が付いたみたいよ.....』

『だいたい、長靴の買い過ぎで、家計が破産だなんて聞いたこともないけど　　　ね.....』

『結局、おっさんも、いろいろ考えた末に思いついたのが、穴の開いた長靴の　有効利用ということらしい.....

　どういうことかというと、要するに、晴れた日には、穴の開いた長靴を履　　き、雨の日には、穴の開いていない普通の長靴を履くということらし　　　　いのだ.......』

『バカみたい.......』

『まったく、そんなことするくらいなら、晴れの日には、最初から短靴を履け　ばいいだけのことなのに、おっさんたら......』

『あの人、ほんとうに馬鹿というか阿呆というか、くるくるパーだね！！...』